すっかり日本人にもおなじみになった「中国茶」の歴史です。
お茶は植物学上、学名:カメリア シネンシス(Camellia Sinensis)という。
Camelliaはツバキのことですから、ツバキ科に属する常緑樹なのです。
ではこの茶樹の原産地は何処?中国であることは間違いなさそう。
かの唐代の茶聖といわれる、「陸羽」という有名な人が著した「茶経」というお茶のバイブルみたいな本があり、その最初の章に曰く、”茶は南方の嘉木なり。1尺、2尺より即ち数十尺に至る”。
南方とは中国・雲南省、広東省、広西省からベトナムにかけての亜熱帯をいうようである。嘉木とは宮廷にある美しい木の事。
現代の一般的な茶畑から想像すると、奇異な感じがするが、野生の原種は低くても5〜6m、高いものでは30mを超えるものが現認されている。
場所は中国・雲南省が圧倒的に多く、次いで福建省や四川省でも発見されている。
中国という国は、世界でもまれな約3千年の文献記録を一貫して「漢字」という文字で有しているというのが特徴であり、その道の学者さんが、色々な伝承や文献を当たりながら考証していくには実に好都合で大きな強みになっている。
「飲むお茶」が「食べるお茶」や「薬としてのお茶」から派生し、喫茶文化が定着して来たという俗説は、必ずしも正しくないようである。
お茶の薬用起源説であるが、日本でおなじみの「神農」さん(実は伝説の時代人で、実在の人物ではない)起源説はどうも眉唾らしい。
本草学(中国の薬学にあたる)の起源は古く、紀元前の春秋戦国時代で既にかなりの水準に達していたと見られる。お茶が生薬的に使われた記録もあるが「薬」としての薬効や地位はあまり高く無かったようである。
従って「飲むお茶」が普及する中で、「茶」に薬治的な効果があることから上述の「本草学・本草書」に入り込んできたというのが妥当な見方と思われる。
中国雲南省南部の少数民族やタイ北部、ミャンマーに亙って、主食ではない、嗜好品としての「食べるお茶」、「噛むお茶」が普及していたことは実証されている。しかしこれは終始「食べるお茶」として自己完結しており、「飲むお茶」に転換したというわけではない。
・唐代(618〜907年)に入ると、飲茶は上流階級のみならず、一般庶民の間でも急速に普及していった。当時のお茶の製法・飲茶の方法は現代と大きく異なり、まず摘んだ茶葉を「蒸し」(現代のわが国の製法と同じで、酸化・発酵を止めるために釜炒りでなく蒸していた)臼でつき、固め、乾燥させた後、固形茶(餅茶)に仕上げ、保存していた。
飲むときは、まず炙って、薬研(懐かしい言葉です)にかけて粉末にし、この粉末を熱い湯に入れ、なおかつ塩を加えていたようです。随分手間隙かけていたわけです。
因みにわが国へ飲茶の風習が伝わったのは、平安時代(800年ごろ)の初めということが確認されています。
・続いて宋代(960〜1279年)になると、固形茶に加えいよいよ葉茶(リーフティー)が使われるようになって来ました。茶碗に、加工された茶葉や粉末茶を入れ、その上から熱湯を注ぐ方法に変化してきました。また「喫茶店」が出現したのもこの頃です。
・明代(1368〜1644年)に入ると、茶葉の製法も現代中国と同じ「釜炒り」になり、餅茶が廃れ、葉茶が主流になってきました。
従って現在の喫茶文化のはしりは、明代末期にほぼ確立されたといってよいと思う。
以降、時代を経ながら紅茶や烏龍茶が、いわば新種のお茶として登場して来ますが、中国喫茶文化史上から見ればお茶はあくまで「緑茶」がその太宗を占めています。「紅茶」や「烏龍茶」の歴史はせいぜい2〜300年の歴史しかなく、その製法も、起源はインドやスリランカではなく中国が本家です。
イギリスで喫茶(当初は緑茶で後、急速に紅茶が主流になった)が普及し始めるのは17世紀後半といわれています。イギリスで喫茶文化が定着するに伴い、いきおい中国から茶葉の輸入もうなぎのぼりにに増え続け、加熱していきました。嗜好品としての「茶」の取引が、重大な歴史の転換期に色濃く拘わってきたという事実が、かの有名なアメリカ独立戦争の発端となる「ボストン茶会事件」(1773年)であり、もう一つは1839年に勃発した「アヘン戦争」です。
たかがお茶、されどお茶です!
因みに、インド産の紅茶がイギリスに現れたのも、この年(1839年)からです。
「お茶」というものを世界的な視野で見ると、「紅茶」の生産量は「緑茶」の数倍ともいわれ、断トツでトップの位置を占めている。「緑茶」を大量に消費するのは、わが日本と中国の両国だけということは事実である。
また話が飛ぶが、日本人でウーロン茶の名前を知らない人はおそらくいないと思う。元来烏龍茶は、中国の福建省や台湾に産する特殊な地方茶といってよいお茶で、これがわが国でブームになったのは、84年ごろから断然目立ってきた「缶入り烏龍茶」が拍車をかけ、一挙に普及したと見られる。
一方、名前が知れ渡るのは喜ばしいことであるが、烏龍茶イコール缶入り・ペットボトル入りの”例のお茶”というイメージが定着したことも事実である。
それはそれとして、手間ひまかけて淹れた烏龍茶とは、明らかに味わいが異なるということも判って欲しいという焦り(甚だ手前勝手だが)もある。どのお茶も、地域や天候に左右される農産物でもあり、多種・多様、品質の差も激しく、嗜好性の強い商品である。
出典「中国喫茶文化史」布目潮風著・岩波現代文庫
提供 中国茶坊 紫藤
本格的に中国茶を楽しめるお店です。
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